滴り落ちる血のようなリズム/ホロウ・シカエルボク
 
古臭いドラマを流していて…そこに出ていた役者は誰一人知らなかった、俺は工場を後にして自転車に乗り、帰ろうとしていた、空はもう真っ暗になっていて、帰り道は途方もない上り坂だった、なあ、この夢のことを思い出したのは今日が初めてなんだ、あんな海には行ったことがない、あんな工場のことなんか知らない、何を作っているところなのかも結局判らず仕舞いだった―戯言を並べ立てて、真夜中は深くなって、俺はまるで海のそこにでも居るかのような息苦しい眠りの予感に顔をしかめている、深く小さい傷跡から滴り落ちる血のようなリズムの雨が、もう一度降ればいいのにと思う、そうすればそこには少なくともリズムが産まれるだろ…俺はリズムの中に身体を浸して、すんなりと眠ることが出来るはずなんだ…。




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