宮澤賢治 文語詩未定稿『雪峡』の鑑賞のために/Sabu
 
も、それほど大きな問題ではないと考えます。

 ちなみにGiton氏は「なだれ」が原因であることを前提に、さらに「神楽」を「なだれ」の前兆の轟音に結びつけて解釈しています。しかし、その解釈には基本的に無理があります。なぜなら、仮に「なだれ」を想定した場合、この詩の情景からすれば新雪による表層雪崩ということになるはずですが、表層雪崩は基本的に前兆のとなるような轟音を発しない性質をもっているからです(その点土砂崩れ等とは違います)。より厳密にいえば、不安定な積雪層内から出ることのある「ワッフ音」と呼ばれる単発的な音が、歩く人に聞こえることがあるかどうか、というくらいです。

 さらに吹雪や雪崩
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