有吉について/吉岡ペペロ
 
有吉とぼくは仲間うちでも別格だった

ふたりは仲悪くはなかったが互いの影響力を鑑みて近づくことを避けていた

有吉とぼくは野球が好きだった

プロ野球のもっとも大切な試合のチケットをぼくは手に入れていた

思い切って有吉を誘った

とぼけたふりをして彼は普通に喜んでくれた

他の仲間はぼくを冷やかしとぼけたふりをして喝采してくれた

ぼくの運転で一緒にゆこうとしたのだが有吉はだれかにつかまってしまった

ぼくは有吉からの連絡を自宅で待つことにした

待っているあいだにミスをしてすこし飲酒してしまった

試合はもう始まっていた

つかまらないと嫌だからぼくはタクシーをつかまえに外に出た

カーナビで試合を観ながらタクシーのなかで待機していた

あんまり連絡がなかったので有吉に電話してみた

すぐ出てくれた有吉の声のうしろからは歓声がきこえていた

聞くとぼくを球場のそとでずっと待っていてくれてたらしい

八回裏の攻撃がおわっていた

0対0だった

ぼくは急いで有吉の待つ球場に向かった








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