秋の歌/ハァモニィベル
何気なく剥くと、秋が出てくる。暗い場所に捨てられた石のように抱き合ったまま微睡むアリバイの無い〈真実と私〉が、突然光を浴びた性器の様に、居たたまれぬほど高鳴ったまま眠っている。
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画家のO君から手紙が来て、ぼくの正面に窓があった。描かれた秋のノオトは方程式の落ち着き。汗臭い人間たちが寄り添って来る無関係な午後の流れは、波を畝らせ、船をいっこうに辿り着かせぬままに。路上で、たった今轢死した猫が、立ち上がり鮮やかに駆け抜けるのを、佇んで観測しているそのぼくの…正面に、窓があった。
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Sが堕ちて降るのを、眼
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