恋のように死す/ただのみきや
 
ある日私たちは純白に生まれる
何一つ自分らしさなど持ち合わせず
ただひたすら落ちて往く
それはいつの時代も変わらない

けれどこの時代に相応しい
数多の毒に冒されながら
私たちは落ちて往くのだ
尚も純白のまま

時と風 運命を吹き分ける
それぞれの生とそれぞれの死――私は
決して落ちてはいけない場所
柔らかな素肌へと落ちて往く

温かい 太陽とは違う優しい熱が
ああすべてを溶かして 刹那
私は…純白を脱ぎ 透明になる
つたって往く――



     ――雫を 舌がぺろり
空を見上げていた少年がふり返り

「お母さん 雪たべちゃった」

「汚いからやめなさい!
 ダイオキシンとか放射性物質とか
 いろいろ入って体に悪いのよ」

(コンナニキレイナノ二…… )

まだ恋も知らない
少年のつぶらな瞳の奥
深く底を隠した冬の空

――初雪は夢のように消えて





       《恋のように死す:2014年10月31日》





戻る   Point(15)