ひとつ 逢魔/木立 悟
枝の影
蜘蛛の影
午後から夜への
庭を噛む影
わずかに斜めの
旅をしてきた
骨に沈む目の
まばたきを数えた
うるおいを はばたきを
置き去りにしてなお
泣きころげまわり羽毛を散らし
径を横ぎり 落ちてゆく
崖は甘く
越えられぬ罠
たくさんの想いがわだかまり
手のひらに水をすくい
高くまばゆいものを映す
僧兵に似た鉄塔が
午後の曇を背にゆらめいている
呼吸は細く 縦に連なり
ひと足ごとに
歩みを牢に入れてゆく
むらさきと白のさかいめに
黒いにおいの洞があり
己が望みとは異なる生を
呑みこみ
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