不検知だろうか/ドクダミ五十号
浴槽に溢れるほど
張ったぬるま湯に
沈み込むその時に
ずっと居なかった
母親を思うのです
たった五年にも満たない
その女です
母では無くて女の記憶が強く
父親の記憶も薄いが
少なくても男では無く父親
親の無い子供は愛に憧れ
親の無い子供は愛に絶望する
何処にあるか解らない愛を
常に求めて居た様に思います
故に失ったか元から無かった愛に
さようならを言った時の
絶望感は恐ろしい程でした
ざざざざん
心が溢れている様に
浴槽から湯がこぼれます
少しの塩分が混ざっているとは
誰にも言えない秘密だ
潜ったままで泣いていた
目も閉じずに
愛を知らぬ者は
愛を構築出来無いのだろうか
きっと答えはえられぬのだろう
死んでしまうその時に至っても
戻る 編 削 Point(2)