箱庭詩集/嘉野千尋
 
  校庭の桜並木花吹雪に見惚れる君に見惚れる僕


  若葉萌えて黒髪の乙女自転車ノーブレーキ危機一髪


  君が読んでた本の栞場所を変えた犯人僕ですごめんなさい


  雨の日の窓辺の曇りガラス書付け残した六月の終わり


 「さいん・こさいん・たんじぇんと」白墨の魔法陣描く数学教師
 

 「グッダフタヌーン」呪文を唱える午後の授業帰り道に虹出現


  窓辺から見詰めるだけの恋物語あぁ今日もまた今日もまた


  歌声響く音楽室振り仰いで探すひこうき雲遠く


  思い出を集めて歩く放課後の旅取り残された影一つ


  山茶花の花が揺れ
[次のページ]
戻る   Point(4)