丘/Giton
 
には屋上から森のほうを眺め
六時限が終ると級友たちが帰り始める前に校舎を飛び出した
親しい友人と帰らなければならない日など
翌日はずっと森のほうが気になっていたのだった

そうしたある日、坂の上の朽ち果てた瀟洒な家に
人が移って住み始めた気配が著(しる)くあり
水色と白の真新しいペンキの匂いがした
何日かすると、ヨーロッパの片隅の小さな国の大使だという金髪の紳士と
白い肌の男の子が学校に姿を見せた。その子を見たとき
あの坂の途中にいる子供だということをぼくはすぐに見破ったのだが
級友は誰も知らない場所でありぼくだけの秘密だったからぼくは黙っていた
男の子は片言の日本語
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