老いた町/ドクダミ五十号
高度経済成長期に
私鉄沿線のベッドタウン
緑道が貫き中流以上の人が住む
静か過ぎる町
老いた犬を乗せた乳母車
継ぐもの無き屋敷は更地に
時代の趨勢だと傍観する私の
心は産廃のトラックの荷台の
悲しい家具を眺めている
そこに住まずに何処に
家賃収入を求めて
賃貸住宅に変わる
富の蓄積と停滞が益々
町を老いへと導く
まるで古のローマの様だ
自由奴隷は住むだろう
暗い瞳と疲れた体を休める為に
滅びと老いの間に横たわる
諦めに似た寒々は
静かに町に降り注ぐ
私には無理だが
どうせ人生のたそかれを迎えるならば
町より遠く離れた過疎で死にたい
一つの夢だよ
老いたれば
老いたる町に死すよりも
ふさわしい死に場所があると思うのです
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