硝子の音/草野春心
 


  積まれた雑誌のうえに
  毒茸がひとつ置かれていたはずだが
  きょうは、かげもかたちもない
  隠したのが彼女だということはわかるが
  肝心の方法がわからないから憤懣やるかたない
  それはそれとして彼女は時折わたしの意識の間隙に
  ビードロよろしく稚気にみちた息を吹き込む
  まぬけなわたしのくちびるからころがりでる
  硝子の音は片田舎の煤けた路地に誂え向きだ



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