精通/ただのみきや
少年時代
今とは違う奇妙な生き物だった
そのころ家の近くには古い寺があり
髪の毛が伸びると噂される少女の人形が納められていた
人形を実際に見たことはなかったが
子どもたちが人形の存在を疑うことは無かった
十二歳の夏の夜 蛙が一斉に鳴きやむ刻
目を覚ますと 厚ぼったい四十万に耳は欹ち
二度と寝付くことができなく思えてくる
朝はあまりにも遠のいて――
闇に馴れた目は昼間と違って見える壁の模様をなぞっていた
――微かな音に気がつく 硬い ネズミじゃない
カーテンのない窓 網戸が少し開いている 嗤うように
挟まっている何か ナニカ なにかではなくそれは――
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