乙葉のロンド/衣 ミコ
 

宝箱にかかった閂が外れる、おと
乾いた止め木の、音
十字であったり
星であったりする、乙の葉
鳥居の下に積もってゆく
儚いアルペジオ

秋は「寂しい」だなんて
冬の温かさを知らない人が言うの
辛いから「助けて」だなんて
自然の理を知らない人が言うの
成就する物事を
私たちは見守るだけなのに

青い春の日の中で文通をした
互いが愛する人のことなど
考えもせずに
それは淡い、無邪気な、恋

(いつまでも仲良くじゃれ合っていたかった、イタチみたいに、あなたの尻尾を僕が甘噛みして、僕の尻尾をあなたが甘噛みするの、繰り返す、美しい、ロンドみたい)

食卓の上で揺れている
希望の灯火は温かい
その周りに輪になって
ひとつの旋律を口遊み
この冬を越す
いつかの春に奏でた
いつかの春に奏でる
あのロンドみたいに

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