雪原の墓標/嘉野千尋
雪が白く彩るために切なさは増すのか
薄紫の雪原に伸びる影はただ一つだけ
記憶の奥深くにあの憧憬を閉じ込めて
氷の枝の先に探す冬の太陽は遠く遠く
深く俯いて一月の短い午後を見送った
それでもふれる光があったことを
消えてしまったその瞬間に気付く
振り仰げば小さな星ばかりが空に
求め続ける指先からわたしは凍え
幸福な眠りがまだ遠いことを知る
過ぎ去った時の中にばかり見つけ出す
あの戻らぬ日々を幸福と呼ぶのならば
繰り返し重ねられる秒針の音の隙間に
抗えず取り残されてゆくわたしの影が
何度繰り返せ
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