夕焼け/八布
読んでいた文庫本を閉じて
窓の外に目を移せば
桜の枝に風はなく
文字に疲れた目に飛び込んでくるのは
夕焼け 夕焼け 夕焼け
ばかり
今日の夕焼けは
まるで
いつか見た夕焼けのようだ
なつかしいような
それでいて新しいような
何もなかった休日の最後を
ちょっとだけ彩って
帽子の形をした雲も
クリームパンのような雲も
みんな等しく染められていく
それを見ている僕の顔も
きっと真っ赤に染まっていて
同じ夕日を見ている
僕の知らない誰かの顔も
きっと真っ赤に
染まっているのだろう
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