流浪せよ/竜門勇気
雨だれのある風景
腐った猫のいる町並み
夢の奥深いところで
ハンバーガーを赤いゴミ箱に投げる
爪切りの仕事の成果
死後の破片
破片の持ち主は今日も黒いかばんを持って
出かけてったよ 仕事があるからな
空で大きな鳥が翼をふるって浮かんでる
なあ 君には俺がそう見えるのか?
梅雨の頃の朝
味噌を入れるだけの鍋を見て
冷たい願望に我を忘れて
コーヒーのための湯を沸かしてる
窓から差し込む光が
触れられそうで
手を伸ばしたんだ
小指から順番にそっと曲げて
掴もうとしたんだ
それが掴めてしまったんだ
空で大きな魚がエラを開いて死んでいく
なあ 君には俺がそう見えるんだろ?
赤いゴミ箱の中
白く沈んだ鍋
なあ 君には俺が見えるんだろ?
空で小さな自分の影がこっちを見てる
なあ 俺には俺が見えないんだろ?
針のような雨が降る
腐る死骸が頭の中で消えない
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