オイルと/竜門勇気
爪を切るときに
深爪しないようにするのと一緒で
なにか喋るときには
何も考えないようにする
世界の果てで
自分が待ってるんだ
名も無い鳥にも
名前はあるんだよ
自分で名乗ったりはしないけど
そういうことに本当は
名前なんかつけちゃいけないんだ
十五年前の僕は
本当に腹を立てていた
世界のすべてが気に食わなかった
怒りは僕の眉を吊り上げて
焼け付いて焦げ付くまで爆発し続けた
甘い陶酔の燃料で
それを燃やすことは
人を拒絶することだ
結局、人を拒絶しきることは出来なかった
拒絶しているのは自分の中の他人であって
自分の箱庭で自家中毒を起こしているこ
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