君はラストシーンみたいに笑う/竜門勇気
 
まされそうだ
砂糖水を口にするのはまだ早い

何を見て
何を今日話す
世界中どこでも訪れるような夜
僕はそのすべての影でもいい

今も浜辺には波が
風とその場所のにおいが
駆け巡り
ささやきとともに旅して
”ねえ何か話をしてよ”
そういうやり方でだけ
僕を喋らせる

赤い花束はしおれて
キノコは溶けていく
白い指が歩きまわる部屋の中
かつて砂糖水が入っていたカップにキノコが伸びる
かつてグレープが泳いでいた場所にも
やがて花束だったそれにも
空っぽの部屋は僕の気持ちだけでいっぱいになる
そんな夢想に気づいているのか
ジューサーに薔薇とトリュフが放り込まれて
君はラストシーンみたいに笑う

僕はそれを真似してみる
ものまね師が僕らを笑ってるけど
もうそんなのどうでも良くなった
切り札をジューサーに投げ込んで
なにか世界の終わりでも待つみたいなやさしいきもちで
混ざる瓶の中身を見てる

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