敬愛/ただのみきや
 
それは時を越え届く手紙
――封筒は茶色く変色して
だが土色の背中に亀裂が入るように
そうして新たな啓示を告げ知らせる妖精が
花弁のような華奢な翅にその霊妙を巡らせて
そよ風とワルツを踊りながら近づいて来るように
言葉は素足のまま
濡れた芝生を渡って訪れる
眩い天気雨のように微睡を拭い去り
開け放たれた窓から脳裏を満たす
吐息を保ったまま
胡桃と蜂蜜 そして――
そこはかとなく死の香り
うっとりと酔いしれて
激しく掻きむしられる
一五〇年前の心象に
焼かれたり磔にされたりしながら
翻訳によって島田に結いあげられた
あなたを朗読する
それだけが許された口づけ
キジバトの悲しみを枯葉が覆う
放射冷却の朝
あなたの窓辺で綴り織る
わたしは小さな蜘蛛だ
あなたはあまりにも静かに戦った
決して得ることのないもののため
知りつつも叫ぶことを止めなかった
それがあなたの詩



          《敬愛:2014年10月11日》







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