無題/桐野ゆき
月の影を踏む
遠い街の明かりがみえる
真夜中にひとり
はだしで歩いていく
あの街は何色
遠い故郷の色
今はもう覚えていない
記憶するスペースを空けて
そして今頃
気づくことは
何もかもが
思い通りには行かないこと
あなたの笑った顔が見たくてだけどいつも悲しませるばかりでどうしようもなく途方にくれて今日も住宅街のはずれにある公園のブランコで暇をつぶす。そのうち自分が何を考えて何を感じて誰と仲が良くてどこへ行っていたのかさえわからなくなってここにいるのかいないのかこれは現実なのかどうなのか。ねえどうすればいいの。
私は私を飼い慣らせない
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