徒然に/藤原絵理子
「こんなとこにおったら,殺されてまうわ」
自覚症状のない患者は 大抵こう言う
痛くもない腹を探られるような 不快感
PCが作った断層映像など 何の説得力もない
説明すればするほど 脅し文句に聞えるだけだ
「やばい仕事やな…」
頭蓋骨を鋸で切って 元に戻して蓋してきた
そんな同僚が ファミマのから揚げを
美味しそうにぱくついている
「ほっぺたに,血ぃ飛んでるで」
冗談でからかうと 血相変えて洗面所に飛んでいく
わが身は大事だからね やっぱり
「人間て,なんなんやろね?」
学校では 病気の解析的詳細と
治すためのマニュアルは用意されていた
けど その果てにあるものへの
対処法マニュアルは どこにもなかった
「それで,死なへんやろね?」
「ブドウ糖の点滴,いつもしてるやん…
今日は,どないしたん?
なんか嫌なことでもあったん?」
あたしの口調が また婦人警官になっている
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