流浪。/梓ゆい
言葉と感情に潰されまいと
無になることを覚えた・・・・。
怒り・悲しみを表し、伝達手段の模索をしても
笑い飛ばされて終幕を迎える・・・・。
「知りすぎたことは、マイナスにならずに済んだ。」
狭い風呂釜に身を沈め
己の存在を消してゆく・・・・。
「届かない感情は、汲み取られることも無い・・・・。」
目を伏せて
次の瞬間には倒れたオイボレ・・・・。
「分け合え。分かち合え。」と
諭した仲間どもは皆
粗末な墓標の土の中。
ギターの弦は惨めにささくれて
見取られることも無く
朽ちた裸体を荒地に晒す・・・・。
「来るならおいで・・・・。迎えるよ・・・・。」
ぼさぼさの白髪。
捲れた爪。
つま先の開いた革靴。
(足から這い上がる不幸から、住人は逃れたのだろうか・・・・?)
小雨が墓石を濡らし
喉もとの悪寒に負けまいと
かさを投げ捨てて、門へと向かった・・・・。
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