美化されすぎた世界のせいで/木屋 亞万
歳を重ねるごとに教科書はどんどん小さくなって、今や親指ほどのSDカードになってしまっている
何からも学ぶことができなくなっていよいよ終末感が漂う
空は暖かな海のように遠いところで水色を安定させている
何もしないでいたらだんだんと腕が細くなり、胸板が薄くなり、お腹だけがゆるゆると張り出してきた
テレビは相変わらずから騒ぎを続けているし、ラジオはいつまでも恋の歌を流し続けている
陽気さも慕情もどこか遠い物語のようで、私の周りでは染みだらけの日常が埃をかぶっている
停滞している生活から抜け出すすべを知らなくて
しゃれた喫茶店で飲むコーヒーもただの焦げた水で
甘すぎる油まみれの砂糖
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