意識のリセット/……とある蛙
川嶋医院の
門柱までの石の階段を
ケンケンしながら昇って行く
昇った先に待っている懐かしい顔
随分と草臥れたセーターを着ている子や
今日おろしたてのジャンパーが
砂や泥で白くなってしまった子
中には青っぱなを垂らしている子もいる
みな一様に大声で話しながら
階段を上ったり下りたりしている
九歳の自分は
随分無理が利く
最後の一段を下りると
そこは拓銀の社員寮の団地だ。
同級生の女の子がいて
北海道に住んでいたから色が白いのだろうなどと
勝手な思い込みもあって
少しだけ逢いたいなどと思っているうちに
どんな顔だったか忘れていることに気づく
年を取るといろいろ失われてゆく
大切な人、大事にした想い出や記憶
嫌なことも。
でも寂しがることはないかも知れない。
だんだん身軽になって行くと考えれば
そんなに辛いことではない。
死ぬまでにどのくらい身軽になれるのだろうか。
子供の頃の想い出だけに生きて行くようになる。
これで意識のリセット
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