ノート(空と食卓)/木立 悟
 



遠くにひとつの食卓があり
ひとつの蝋燭が灯っている
両わきを
たくさんの人々が過ぎてゆく



火は光を燃やし
蝋を燃やし
自身を燃やす
空は序章の終わりのように
どこか疲れた足跡に満ちる



煮詰まった鉛の夜から
雪はいつまでもやって来ない
かがやきがかがやきを食する場なのか
食卓のまわりには椅子が無く
倒れた大きな扉のかたちに
鉛の波を退けている



夜をわたる鳥の影が落ちてきて
食卓はいつのまにか緑に覆われ
影のなかから差し出された手に
さらに緑へ
さらに遠くへ置き去られてゆく



煙が鉛の溝を流れ
光が火に 火が光にそそがれて
かがやきの球になり あたりを呑んでも
食卓は燃えることもなく
消えてしまうこともない
通り過ぎてゆくはじまりと
戻り来る終わりの淀みのなかで
食卓は何かを待ちつづけている








戻る   Point(2)