九月の天使/塔野夏子
 
街はずれの空き地
うち捨てられた木箱に
天使が一人腰掛けている

その双つの翼は
いろいろなものの欠片で出来ている
ガラス片 陶片 金属片 石片 木片……
すべてかつては何かの一部だったもの
しかし今は それだけでは役に立たぬもの

(それらは翼のかたちを成してはいるが
 果たして天使は 飛べるのだろうか?)

天使の双つの 醒めた海の色をした瞳には
其処からは見えるはずもない
はるかな白い灯台が映っている




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