街路樹/草野春心
 


  歓びはなかった
  とはいえ哀しみもなかった
  わたしたちはベンチを分け合って座り
  冬の始まり、辺りに人影はなかった
  言葉はさっきまで……あった
  今は沈黙さえ、ない



  だが街路樹はあった
  陽の光も、わずかに残されていた
  あなたの巻いている緑色のマフラーもあったし
  それを揺らすように木枯らしも吹いていた
  わたしたちに魂などというものがあるのだろうか
  あなたが本当は何処にいるのか
  わからない わたしには 永遠にわからない



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