落手落葉/岡部淳太郎
 
陽が落ちる
葉が落ちる
その中に埋もれて
誰かの手が落ちている
手首から先を見事に切り離されて
隠れるように静かに余生を送っている
枯れた手の来歴は誰も知らない
気ままな散歩の途中で見つけたとしても
放っておいてあげた方が良い
手は
ひとりでのんびり暮らしたいのだ

そして誰かの歌が聴こえる
ひとりきりの 秋の夕暮れの歌
鳥は無益な羽ばたきをやめ
枝の上でひっそりと休む
枯葉の中の手は
時に這い
時に息を潜めて固まる
寒さを強める風に吹き飛ばされないように
地虫の囁きにくすぐられながら
華やかな過去の夢を見る
陽が落ちて
色を失くした庭の中
手は膨大
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(4)