行方知れずのゆくえ/為平 澪
【行方を尋ねないでください。
それは、行方不明になりたかった人、限定で、お願いします】
そんな紙を 寂れた下町の施設に 貼ってあげたい時がある
何の名札も値打ちも持たないということの
自由さと 保証のない危うさを 背負って旅に出た者たちに
名前や住所や、姿勢や仕来りを 押し付けたがる
「上」と 思っている人たちの みすぼらしい自負心を
満足すためだけに貼られる バーコードやナンバーで
彼らを呼んだり ましてや 白い箱に閉じ込めて
飼育しては覗いている「上」
人は 人と人との間に いつから川を作るのだろう
その川の向こう側に 憧れる者を
人同士で 裁けるのだろう
境界線を人差し指で 引いた人
その人に 私は引き金を向ける
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