使命/葉leaf
うに、彼は淡々と話した。それ以外にもたくさんのことを話したが、私の記憶にとりわけ残ったのは以上のような話だった。
だが、悲しいと言っている割に、彼は溌剌として、生気に満ち溢れていた。学生時代の淀んだ雰囲気はまったく払拭されていた。私は思ったのだった。彼は初めて世界から愛されたのだ、と。学生時代、あれだけ愛を渇望していた彼が、やっと世界から必要とされ、世界から好意を示され、世界から重要な贈り物をもらった。彼の使命は彼に対する世界からの愛そのものであって、それは彼を強く束縛すると同時に彼を大きく満たし、彼の誰かから求められたいという渇望を充足した。愛されないと嘆き、愛を求め、愛を得られないまま就職していった彼に、仕事は一つの大きな愛を与えた。彼の心の最も繊細な部分、最も秘められた部分は大いに喜び、彼は昔より一層人間らしくなったのではないだろうか。彼は今、愛される喜びに浸っている誰よりも人間らしい男だ。
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