鎖/天地無用
 


パンがほしくてあなたの店を訪れた
焼けたばかりの優しい匂いにほぐされて
乾きかけの羽をゆっくり風に乗せて

パンが欲しければどこにでもとあなたは
いやそうでもないからだとわたしは
なんとも奇妙で味気ない話が交わりあい

わたしは片手に鎖をぶらさげてさまよう
かまわず締めてくる奴らという機械
止まない資本の回転に絡めとられながら

奴らを街から追いたてるための鎖どもが
ぶおんぶおん新鮮な血の流れを求めて
何十年もアスファルトを跳ね回っている

深夜に響き渡る叫びが冷ややかな者らの
抉りとられた眼窩を突き抜けるときに
あなたの店を訪れる訳があなたにわかる





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