蓮池/アラガイs
 

憎しみを忘れるな
献身的に仕えれば仕えるほど
鬼はわたしを罵り唾を吐きかけた
黙々と庭で草むしりをする人間どもは何故か笑顔で楽しそうだ
※尤も人間たちは舌を抜かれていた
不思議な光景に映る
人間たちの姿
わたしは一度人間になりたい、と思わず叫んでしまった
其処が地獄とも知らず
焦るように少しづつ遠ざかり
わたしは其処から逃げ出して行った。

気がつくと餓鬼たちはすぐにわたしを追ってきた
逃げても逃げても
姿を変えては追ってくる
ある晩の日に
とうとう山を越えてわたしが辿り着いた其処は邪気の棲家で
辺りは草だらけの湿地に蒼い山の影
そして弓のように大きく
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