私/為平 澪
見えないものを見 聞いたことのない歌をうたう
聞いたことのない声を出し 人と関わりたがる
私の目は 饒舌に喋り続け
下半身の纏った嘘を 脱がせようとする
私に口はないが 手はいつも人を殴りたがるし
私に切符はないが 目を瞑れば何処へでも行けた
あなた方の瞳に映る私は 私であったであろうし私でもない
あなた方の記憶する私は 決して立ち止まらない 君や誰か
※
青信号のスクランブル交差点
誰も私の顔をして歩いているのに
誰も私になれないまま 毎日を通過していく
私は 赤信号の中に住む
私は 交差点の真ん中の点
私は その点を振り返った君に 微笑んだ
踏みつけられたままの文字
戻る 編 削 Point(8)