台風とじいちゃん/salco
同行一人この地球上
ガチで何かと対峙したい
老い先みじかいパッションは
しおれた筋力、手薄な骨密度を供に
かすんだ視力と濁った判断力を武器に
若干の内科所見も振り捨てて
関節と軟骨の軋みが嫌がるのも聞かず
身を投じるのだ冷や水へ
ドン・キホーテの奔流へ!
黒の合羽が押し戻される
よろよろと電信柱へ手を伸ばす
逆巻く風と叩きつける雨の中
おれはベランダで声を限りに
じいっちゃあーん!
ガンバレエッ!
この雨風とあの聴力じゃ聞こえはしまい
そして誰にも見えはしない、飛沫が洗うこの泪
の裏の教えたくない後ろ暗さも、おれは絶対忘れまい
ついて行ってやりた
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