台風とじいちゃん/salco
の老い亢進
行き場失くした自己像の憧れワープ身の置きどころ
そんなこんなが甦る
俄然コソコソ甦る
「ちょっとおじいちゃん、どこ行くの」
「…えぇ?」
「またそんなの着て。外出ちゃだめよ!」
「いや、ちょっとな」
「またかい親父。やめなさいよ」
「いや、これをな」
「はがきなんか明日でいいだろう」
「そうよおじいちゃん、やめてちょうだい」
去年もまとった雨合羽(フルメタル)
明日じゃ遅い
用水路を見に行きたい
できればビニールハウスもだ
農家じゃないのにじいちゃんは
守る物など1こもないのに
非常事態のこの際に
押し問答を押し切りたい
せめて
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