果て/芦沢 恵
ただ 遠い出口の丸い光が見えていたから
「それでは また」
ポツリ一言 質量を伴わない声では背の側に当たったことに気づかない
ひたすら光の穴に向かって空回りの歩みをすすめていたが
「それでは また」
声は独り言のように繰り返されて
背に気持ち悪く押圧する抵抗に変わる
「またね ですから またね」
足早に ただ足早に遠のく
口にすべきでない言葉嘔吐
隙をついた質量のない分銅が先回りをして光明を絶った
長きは背の側に揺らめいていた
気づかなかった遠いワンデイ
フーリッシュ・ハート
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