とうに夜明けで/佐々宝砂
 
肌ざむいから
冬のあいだに
編み上げることのできなかったセーターを
ベストがわりに着て
すこし冷めてきたコーヒーを飲んで
読みさしの本を閉じて
(結局あんまりたくさんは読めなかったな)

構築することのできた断片と
断片することのできた構築と
演劇することのできた台本と
台本することのできた演劇と

うごこうとさえしなかった私の核と


それらすべてを脱ぎ捨てて
シャワーを浴びてねむってしまおう


とうに夜明けで
ラピスラズリの空は
きらめきをかがやきに変えてゆく

その準宝石の輪舞
宝石があらわれいでるまえの
ほんのわずかなあいだの

私の存在

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