夜毎 夜迷/木立 悟
 




雪に重なる雪の音
角を曲がり 消えてゆく
光のはざま 分かれ径
樹々のかたちに倒れる霧


光の壁に光が
影の壁に影が浮かび
輪郭だけが吼えている
誰もいない街に吼えている


夜の車の
助手席に生える草
やがて音になり
土にこぼれ 消えてゆく


自らを刺し
片目になった夜が歩く
雨が 灯が
あとをついてゆく


背く鏡を海に捨て
従う鏡を叩き割り
そのままを知るものは消え去った
万華鏡を残し 消え去った


途切れ途切れに空へつづく髪
音の描く絵は降りそそぎ
地に触れては燃え上がり
灯のない径をまだらに照らす

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