風をさがして/千波 一也
夢、を
にぎり締めたつもりで
ひたすら走った
走るしかなかった
懸命に汗をかいたら
報われるのだ、と信じた
吹く風は
流れる汗を連れ去って
清々しいほど、ゼロにした
何ひとつ残せない自分のことを
嘆くべきだったかどうか
今もわからない
夢、は
いつのまにか形を変える
それに関与したはずの己について
思い当たるとき
風は
遠い
傷つくのが怖ければ
目をそむけることに慣れてしまえばいい
それがいつか
夢、の代わりになるだろう
たとえ逃避でも
風をさがしてここにいる
優しく切り分けるすべをもとめて
時に刻まれている
生き長らえることのかなしさは
何を与えてくれるだろう
あこがれに怯えている
親しむことを疑っている
孤独の底をかろうじて知らずにいる
避けたいすべての名を知っている
風をさがして
背中のつばさを隠しきれぬまま
風をさがして
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