墓参/MOJO
 
石の墓石は、春のやわらかな陽射しを浴びて、白く光っている。二人の叔母は、既に涙ぐみながら墓石に向かって話し掛けている。
「えこんちゃん、太一がここまで運転してきたのよ」
 めぐみは、墓苑の入り口の売店で買った花束を供えた。
「太一も怪我が治って、もうすぐ働けるんだって」
 洋子は、桶に汲んだ水を、柄杓で墓石にかけていた。太一は、下手糞な演劇部のようなだと白けた気分で墓石を見ていたが、ふと表情を変え、叔母たちをさえぎり言った。
「あれ、花の位置が違ってるよ」
「あら本当、お線香なんて縁がないから間違えちゃったわ」
 めぐみが恥ずかしそうに、花束を線香用の筒から生花用の筒に移しかえた。
[次のページ]
戻る   Point(1)