金魚/千波 一也
 


たちのぼる
言葉と夜の境界へ
金魚がゆらり、にげてゆく

すべからく
広がりはじめる黒の祭に
あらがう手立ては
浅瀬にある

鮮やかで
にぎやかな
喪失のなかに
ある

一度ならず、二度、三度
金魚はしずみかけてみせて

静寂をたたえた水の隙間に
断裂を命じる


ほどかれた憂いの名は
遊泳


たちどころに
嘘ときれいの境界へ
月がとろり、と染みてゆく

曲線が
無限にこぼれてしまえるように







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