グレープフルーツ/
青土よし
泣かないようにしたい。
焦げたカラメル色のまだらな鞄を持ってわたし、
想像しないようにしたい。
ゆっくり音楽が鳴っていた。
嗄れ声の男が、夢を見るときだけは無垢なのだと歌っているのが
きこえた。
ピアノの伴奏に合わせて体中の想像が
踊りだす。どこにも行かないんだってね、
きいたよ。
あなたは服を脱いだ。わたし、
それを見なかった。
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