ノート(凍奏者)/木立 悟
冬の背中
冬の公園
冬の遊具
開くはずのない窓のまぼろし
そこに居ない声
大勢はひとり
冬の径
握りしめた楽器
明るい
ただひとりの窓
陽を浴びていた
高みへ流れる 粒の陽
空が空を数えまちがえ
あらためることなく
柱は増え
崩れ崩れ 降りつづけ
もう会うこともない青緑
水のなかの生きものの軌跡
紋に触れる指
指すだけの指
今は居ないものと歩くとき
水は遠く 音は遠く
手にしたものさえ
手と共に遠のいてゆく
雪ふる午後の涙とふるえ
かじかんだ指のまわりのめまい
誰にも読めない楽譜を見つめ
閉じた窓の径をすぎてゆく
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