秋の向こう/藤原絵理子
年老いていく 秋は黄昏の川に
燃え残った夢の残骸は 流れて
それでも 生きなければ ささやかな
喜びのために あてにはならない
忘れられた郵便ポストに 投函した
出しそびれた手紙 青い月の夜に
あたしの喜びは ほかの誰かの
悲しみかもしれない にがにがしく
高い空 風景は よそよそしくなって
丘の上の樹は 影を伸ばす くっきりと
見知らぬ街に 教会の夕鐘が響いて漂う
あたしの心は 影をなくして 彷徨った
あてもなく ゆらゆらと揺れながら
乾いた空気の温度に 冬を探している
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