ライン/ホロウ・シカエルボク
娘が望んだほどに広まることはない、それどころか誰の目に留まることもない、娘はやり方を間違えたのだ、何事かを残すのなら出処をはっきりさせておかなければならない、つまり娘は自分の存在を明らかにしておかなければならなかったのだ、嘘であろうが本当であろうが、つまりはそれが発するということであるのだから、それが何かを残そうとするものたちに課せられたしきたりであるのだから
無記名な文書はゴミ箱から焼却炉へ、そして灰になり無意味に積もっていく、彼女が見ていた言葉と同じように、彼女が見ていた存在と同じように…彼女の真っ白な骨はなにも待たぬまま、暗がりで遮断された運命の中に眠っている、日付は進行し、様々な出来事が日常の中で記録されていく、そうして彼女はあるともないとも言えないささやかな物体になる、嘘や本当で計れないものなら良かったのだろうか。
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