ツバキホテル908号室/そよ風
な柄シャツ
夏の日のスプリンクラーから
みえた蜃気楼
産まれてきた妹の
赤くて小さな手
スーパーマーケットに隣接した
レストランで飲んだメロンソーダの貴重な緑
夜道をサンダルを引っ掛けて
迎えにきてくれた母の白い素足
子供部屋のタンスに貼られた擦り切れたシール
自転車で通った通学路の
木漏れ日
もう戻れない
キラキラした日々が
まるで昨日のように溢れて
脳の奥がジンジンと痺れる
ツバキホテル908号室は
いつも
誰かの解けない縄をそっとほどいて
柔らかい身体を解放してくれる
ベルボーイは
いつでもドアをそっと閉じる
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