残らない詩のために/ただのみきや
ぼくらは言葉を繋げて
この暗い宇宙を何処まで渡って往けるだろう
一冊の詩集が時を越えることは
真空パックの棺が難破船のように
意識の浅瀬に漂着し鮮やかに燃え上ることだ
死んだ詩人についての薀蓄(うんちく)よりも
幽霊の朗読を聞いていたい
星の囁きのように過去は瞬いている
いまも此処に
ぼくらは言葉を重ねて
この白い虚無を何処まで開拓して往けるだろう
一編の詩も残ることなく死んで逝った詩人たちは
野辺に倒れた無名兵士であり畑の肥やし
やがて誰かの不可思議な花が咲き
食べ方も戸惑うような果実が生じる
農夫は死ぬ 詩は時の方舟に乗る
種は遠く運ばれ蒔かれ
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