独り/きとり
る。
そう、いつもなら・・・・
あの日、いつものように帰ってきた私
けれど同じだったのは家の前までだった
「ただいまぁ…
威勢のよかった声は、
シーンと静まり返った家の中に吸い込まれ
尻すぼみになった。
じわじわ何かが染み込んでくる
玄関にも台所にも二階にも縁側にもいない
お風呂場にもお客さんの部屋にもいない
庭にもトイレにも仏さんの部屋にもいない
ばたばた走って扉をばたん、ばたんと開けっ放しで
「ただいま」と「ねえ、どこ」を繰り返して呼んでも
だあれも返事はしてくれ
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