アラビアータJr.は抵抗しない/ブルース瀬戸内
食べられる前に食べてしまえ
僕の父アラビアータシニアは
そう言い残し食べられました。
アラビアータとは何者なのか
アラビアータの矜持とは何か
そんなことに父は思案を重ね
冒頭の考えがまとまった瞬間
キラリと光るフォークの先で
クルンクルンに露に巻かれて
とある貴族に食べられました。
父さん、食べられとるけども。
最後に僕がそう声をかけると
そらせやけどもなジュニアよ。
と父は力を振りしぼって答え
底知れぬ闇の中に消えかかり
それでもなお最後の最後には
食べられる前に食べてしまえ
俺は今まさに食べているのだ
まるで食べられるかのように。
と質の低い遠吠えを披露して
ツルルンと消えていきました。
なんだかよく分かりませんが
僕はとっても美味しいですよ。
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