神/山人
い詰めると、愛しているのはお前だけだ、他は全部カラダだけの関係でしかないんだから安心しろ、と、一方的に言うだけなのだと。
さすがに娘も行き詰っており、何とかこちらに心が向いてくれないものかと思いついたのが、詩の朗読会の男女参加だったようなんです。
孝子はいつも言っていました。夫は私を裏切っても、私は夫は裏切れない・・でも、何とかこっちを振り向かせたい・・そういつも言っておりました。
娘は夫の裏切りと、一方的な不貞をののしられ、うつ状態に一時なっていました。娘のおもいは、真実をせめて解ってほしい・・それだけでした。そのために今までの自分の持っていた物をすべて捨てる覚悟がある、そう言うのです。
何を捨てたと思います?顔と名前ですよ。解りますか鈴木さん。私は「神」、ですが、本名は岡田です。岡田沙希と言う女性をご存じないですか?佐伯孝子は岡田沙希であり、後に鈴木沙希にまでなったのです。顔ですか、整形ですよ、『神』岡田実はかつてあなたの義理の父だった。
鈴木俊介さん、あなたは今後『神』によって裁かれるのです--
俊介の腋から冷たい汗が落下していた。
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